戻る ≫click
≪バリバリ伝説2のページ≫

第一章 その(1)|その(2)|その(3)
第二章 その(1)|その(2)


バリバリ伝説2〜新たなる挑戦
第二章 その(2)
郡のCBが大きくガードレールに流れた!
「このタコっ!オーバースピードや!」
もう終わりかと思った瞬間!郡の右足がでた!
「ん!?まだまだっ!」
得意のガードレールキックターンだ!
KATANAのすぐ後ろにまでCBが寄る。次のきついコーナが見えた。一瞬、イン側に砂が浮いてのがKATANAには見えた。KATANAは峠の基本通り、そのインを少し交わしてアウトに付いた。その瞬間、ほんの少しだがKATANAが減速した。

「そこだ!」
郡のCBがそのままインをついた!
「どアホッ!こういう時は、滑らない少しはずしたラインが速いんじゃ!」

KATANAのすぐ脇にCBが並ぶ。CBのステップから火花が飛び出る。CBはそのままきついバンクのままコーナをクリアしようとした。フロントが滑った。
普通であればそこで転倒である。しかし、スーパードリフト走行を完成させていた郡の走りには、もはやフロントが滑ろうが、リアも滑ろうが、まるで氷の上をスケートで滑っているような華麗なライン。四輪のような前後ドリフト、そして前輪のアンダーステアを立て直そすみたいに、軽く逆にハンドルを当てる。
「なにっ!?二輪で逆ハンあてる奴がおるかっ!!」
コーナの出口が見えた瞬間、アクセルを全開する郡。
あきらかに、バイクは真っ直ぐ立ってストレートを向いていた。KATANAはまだバンクしたままだ。勝負が付いた。次の瞬間、ストレートのフル加速で前に出たのは郡のCBだった。
「ついに、ヒデヨシを抜いたぜっ!」


前に出るCB、それを追うKATANA。初めてみる光景だった。
次のコーナを抜けると、パーキングエリアが見えた。郡のCBがウィンカーを上げる。KATANAがそれに続く。

ボッボッボッボッボッボッ。ブォーッン!

郡がCBから降りて、ヘルメットを脱ぎながら、KATANAの方に近づいた。
KATANAもまた、サイドスタンドを出してエンジンを止めライダーが降りる。

キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!

さっきまで全開で走っていた2台のマシンから、エンジンが冷えていく音が静かに響きわたる。
「さぁ、ヘルメットをとれよ。」
KATANAのライダーがヘルメットの顎ひもに手をかけた。
小さな体を下にむいて、両手でヘルメットを抜いた。
「!!!」
「ひさしぶりだなっ。ノッポ。」
「ヒデヨシ!」
それは、まさしく秀吉だった!
信じられないが、死んだハズの秀吉だった。
「元気そうやな。ノッポ、体の方は大丈夫か。」
「ちぇっ、さっきのお前とのバトルですっかり記憶が戻ったぜ・・・。久しぶりだな。やっとお前を抜けたぜ。」
「ノッポ。お前も速くなったで‥。しかし、あのイン攻めはタコのするこっちゃで。峠の走りちゅ〜もんまだわからんのか!砂浮いていたら、避けるのが基本やろ。」
郡と、ヒデヨシがガードレールを背にして地面に座った。
「とっころで、なんでお前ここにいるんだよ。」
「‥ノッポ。お前、インターネットやっとるか?」
「なんだ、それ。」
「ドアホっ!だからお前はタコっだっていわれるんじゃ!GPで世界中バイクで走っとるだけやから、あんな金髪ヤンキー野郎に追いつけられないんじゃ!
少しは世の中知っとけ!タコっ!」
「‥‥‥。」
「バリバリ伝説博物館っていうホームページ知らんのか。そん中に、わいがあの世で何してるか書いてるで。 「お前が、俺のカタナをあんとき一緒に燃やしてあの世に送ってくれたやさかい、わいはあの世でも走ってたんじゃ。」
「そうか。それは良かったな。」
「POPヨシムラはおるし、本田宗一郎にもよーけ会っとるで。」
「あっ、そのおっさんは俺も会ったぜ。世界GPでチャンピオンとって日本に帰ってからチームのみんなとHRCの梅井に呼ばれて一緒に食事したぜ。元気な爺さんでな、UFO作るって散々UFOの話聞かされたよ(笑)。」
「あの世には、他にも伝説のGPライダーがいっぱいおるで。」 「お前も相変わらず速いな。」 「おい、わいのカタナみてみぃ。」
「んっ。あぁ!これ1100じゃねーか!きたねっ!どうりでストレートの"のび"が違うと思った!」
「どっかのタコがな、六甲で事故ってあの世に送られてきたんじゃ。バイクも事故ると人間と同じようにあの世にくるんじゃ。ライダーの方は、かすり傷ですんどったから、このカタナはわいがもらった。しかも、本物のヨシムラチューンや。本田のおやっさんも調整してくれたんだで。」
「楽しいそうだなっ。」
「そうでもないわ‥。」
郡と久しぶりに話した秀吉が、はじめて悲しそうな顔をした。

「でたかったで‥、わいも、国内250GP‥。」
「お前があの鈴鹿の後、最終戦に俺のもエントリーしてくれなかったら、今の俺はいなかったもんなぁ。」
「ノッポ。お前と鈴鹿の8耐で、今どきのファイヤーブレードで走りたかったで‥。それが心残りや。GPレーサも仰山でる8耐、思い出の鈴鹿や‥。あそこで、わいらのほんまもんの走りをみせたかったで‥。」
「‥ところで、お前、なんでここにいるんだよ。」
「あの世でな、お前の苦しいこと見ててな‥、身内の人間が苦しい時はこうやって出てこれるんじゃ。あのGP初参戦の年の、出場停止の時みたいになぁ。ただ、今回はもっと深刻らしいから、カタナと一緒に、こうやって峠走らせてもらったんや。ただ、他の人間には見えないハズや。」
「ほとんど、ギャクマンガだな。」
「どうせ、最初はラブコメだったんや!だいたい主役級のわいが、なんで11巻であのタコ車にひかれなきゃあかんかったのや!お前より、このモテモテのヒデヨシ様が、なんですぐ消えなきゃあかんのや!そうでなかったら、今頃、この漫画もヤンマガでまだ連載してて、とうふ屋の車がRX-7やGT-Rなんかブチ抜く漫画描いてなかったで!モテモテのわいがほんまに活躍する漫画になってたら、今頃TVでも放映や!」
「俺も結構もてるんだぜ!外国からもファンレターもガンガンくるし、サインもバンバン書くぜ!」 「本当の二枚目っちゅ〜のは、わいみたいにクールやで。そんな簡単にサインなどせんや!たかだか、金髪のシャンソンねぇ〜ちゃんから手紙きたくらいで自慢せぇ〜へんで。」
「‥‥‥。」
「あほくさっ。」
二人が同時に笑った。

空は青空だ、さっきのFZRとVFRが今頃やってきた。
郡の方をみて、すぐさま逃げるように走っていった。

「んっ?他の人間には見えないってことは、なんで比呂と走ったときお前のカタナが見えたんだ?」
「あれは、わいちゃうで。荻野目や。イチノセにいた。」
「あいつがっ!?」
「お前も認めたとおり、あいつの走りはわいに似て基本に忠実や。体はでかいが、つなぎ着て、ヘルメットかむれは遠目にはきづかんやろ。あのみゆきと比呂がお前のために考えたらしいで。」
「そうか、あいつらが‥。」
「まぁ、退院後、最初はお前もタコみたいな走りだったから追いつけられなかったんやが、だんだんいつもの調子出てきたんでやめたらしいが。ま、わいの真似するもの10年速いわ。」
「ヒデヨシ‥。」
「なんや、ノッポ。」
「お前なんかと、本当はいやだけど・・・チクショー。・・・握手してくれ。」
「はっ!?なんや?、恥ずかしいことぬかすなっ。ボケ」
ヒデヨシは照れながらも、グローブを脱いで郡に手を差し出した。
二人は久しぶりの堅い握手をした。
「もうサヨナラや。もうお前は大丈夫やな。」
「おかけで、お前を抜いた瞬間、なにもかも思い出したぜ!」
「あのイタリアのライダー、気つけろや。思ったより手強いぜ。」
「お前もそう思うか。」
「ノッポ、あの初めてのGP参戦の時のお前の気持ち、わすれるんじゃないで。あのイタリアのパスタ野郎はあの時のお前や。マシンは非力だが、走りのセンスはごっついいで。コントロールもうまいで。あん時のお前から匂ってた、チャレンジスピリッツってやつがプンプンしてるで。ま・・・、わいには劣るがな(笑)。」

そういってヒデヨシはヘルメットをかむると、カタナにまたがってエンジンをかけた。
「またな、もう何度も来れへんが、ノッポがピンチの時は助けに来るで。天国で残りのレース、楽しみにみとるで。本田のおやじさんも応援してるで。じゃあなっノッポ!」
左手を挙げながら、ヒデヨシのカタナはゆっくり峠のあの時のコーナーに消えた。

「ふぅーっ 疲れたな フッ」
残された郡は、どことなく気が抜けた様子だった。永遠のライバル、ヒデヨシとの5年ぶりのバトル。そして、初めてカタナを抜いた充実感。そして、なんともいえないこの気持ち。あの時いらい初めて郡は泣いていた。そして、郡は新たな決意を胸にCBにまたがった。

「だれよりもはやく!それっきゃねーやっ!!」

バリバリ伝説2〜第二章・おしまい
(1999/09/11)

戻る ≫click