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バリバリ伝説2〜新たなる挑戦
第一章 その(3)

次のテスト走行まで時間の空いている郡は、毎朝比呂と例の峠に出かけていた。
一足先に4スト集合サウンドが朝靄の中、峠に響きわたる。
「またあのバイクか。」

キィーン!
郡の頭に激痛が走った。
(あのバイクをみると何か無性に熱くなる。一体何故なんだ!)
郡のCBが待ちきれなく走り出した。
「おい、待て!郡!」
CBのエンジン音が高鳴る。遙かかなたのカタナを目指して。
(教えてくれ!一体俺にどんな過去があったというんだ!)
カタナの走りは、基本に忠実なコーナーへのアプローチ。無駄の無いライン取り。
アクセルを開けるタイミングもいい。
(うまい‥。マシンが安定している。よく思い切り寝かし込んでいるが、不安など見あたらない。)
知らず知らずにアクセルを開けてフルスロットルで攻める郡だが、このコースを良くしているのかカタナの速さは目を見張るモノがあった。
(一体何故なんだ。なぜ、あのバイクの後ろ姿に見覚えがあるんだ。)
峠も終わりになったところでカタナは、朝早い通勤の渋滞の中に消えていった。
(何かが思い出せそうなんだ‥。あのバイクに、俺は大きな借りがあるんだ。)



4月に入り、そろそろGP第一戦も迫る頃、イチノセレーシングのガレージに郡の姿があった。

市川「今年はいつもの年とは違うんだ。しっかり郡のことを頼むぞ。」
太田「郡のやつも、ライディングに関してはちゃんと感覚が戻ってきているみたいだし、まずはしっかりサポートしてきます。」
市川「歩惟ちゃんもまた一緒についていくとのことだが‥。」
太田「すっかりなれたもんですよ。パドックでの生活にもだいぶなれたし、郡の影響ですっかり日本人ライダーも増えてきたし、パドック内では楽しそうですよ。ただ肝心の郡が‥。」

郡「市川さん。このバイクは‥。」
イチノセレーシングクラブのガレージには、あの日以来、鈴鹿4時間耐久ウィニングマシンが飾られていた。
市川「覚えてないのか。それもそうだな。郡が高校の頃、友人の仲間同士で鈴鹿の耐久レースでたときのGSXRだよ。」
郡「鈴鹿の耐久?仲間同士?」
市川「あのバイクショップの比呂とここのみゆきお嬢さんがチームで、郡はこの背の低いライダーとチームを組んだんだ。」
郡「これが俺の相棒?」
郡は写真立てを手にとって、優勝記念の記念写真を眺めた。
太田「ヒデヨシっていうんだ、そいつの名。郡とは違った意味で大した奴だったよ。」
市川「久々に乗ってみるか?GSXR。」
太田「乗れませんよ、ナンバー付いていないんですよ。」
市川「そうか。あはっはっ。」
郡(こいつが俺のパートナー!?)
「そういえば、こいつは頭にくる奴だったな。」
太田「思い出したか!郡!」
「‥いや、ただそれだけなんだ。それ以外は全然駄目だ。もっとこいつのことを教えてくれないか。」
太田「郡は昔、峠を走っていたんだよ。そしてヒデヨシも走っていた‥。」
「俺がレーサーの前に峠を?」
「あれだけ一般道を無茶して走るなと言っていたのに、鈴鹿耐久の後、最後の峠だとか言って、お前とヒデヨシは走りに行ったんだよ‥。」
「そして、どうなったんだ、ヒデヨシとやらは今どこにいるんだ。」
市川「‥‥‥。」
太田「ヒデヨシのことも覚えていないんだな・・・。死んじゃったんだ‥。」
「!?」

郡の体に電気のような衝撃が流れた!あの日の出来事が、今、目の前で起きているかのように!
「そうか!あのカタナはヒデヨシのバイクか!」
あの日の出来事が、フラッシュバックで郡の頭の中を廻る。一つ一つが刻一刻鮮明に蘇った。ヒデヨシのカタナを追う郡のCB。そして、いつもと何かが違う予感。
「ヤバイぜヒデヨシ!止まれっつっこむなっ!」
郡がベットから飛び起きた。

ここはスペイン。郡が暮らすモータハウスの中だ。
郡は夢を見ていた。世界GP第一戦、今年もコンチネンタルサーカスが始まった。
「グン。おはよう。」
歩惟が簡単な朝食を作りながら、顔をだした。
「何か俺、今、ものすごい夢をみていたんだ。ヒデヨシっとかって奴のことを。」
「ヒデヨシ君のこと、思い出したの!」
「俺とヒデヨシの間に一体、何があったのか!」



ドンドンドン!
ドアをたたく音が聞こえた。歩惟「朝から誰だろう。」
そこには島崎の姿があった。
「島崎さん!お久しぶりです!」
「巨摩の野郎は、どんな様子だ。」
実は、梅井が郡のためを思って呼んだらしい。
ロスマンズとの契約があるとはいえ、昨年の最終戦に大クラッッシュの末、記憶喪失となった郡に、スポンサーから第一エースライダーとしては不安ということで、籍はそのままだが、簡単にいうと2番手的な扱いでの今年一年の契約ということらしい。ということで、それならばメカニックも手薄になるし、長年一緒にやってきた島崎さんが、再び今年一年、郡と共にまた世界GPに挑むとしたら、これは郡にとっても記憶が戻る為の何かのきっかけになるのではと、梅井がHRCのお偉いさんを説得して呼んでくれたらしいのだ。
「この人は?」
「グンのNSRを整備してくれる人よ。グンが日本で初めて250で優勝してから、世界GPで優勝するまで一緒に戦った島崎さんよ。」
「この人が俺のマシンを!?」
「そっちは覚えていないだろうが、戦闘能力の低いマシンでよくもまぁ勝ち進んでくれたよ。今年はまたチャレンジャーだ!お互いがんばろう!」

郡の新たなる挑戦が始まった。

世界GP参戦4年目。
また再び、郡は世界の頂点に立つことができるか!
そして、失われた郡の記憶は取り戻せるか?
そして、あの峠のカタナは一体何者か!

新たなる伝説が、今ここに始まる。

バリバリ伝説2〜第一章・おわり
(1999/09/08)

バリバリ伝説2〜新たなる挑戦
第二章 その(1)へつづく


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