COCJ事務局スタッフやクラブ員による、大人の工場見学シリーズ♪

企画/監修:CBR OWNER'S CLUB OF JAPAN事務局

お題目「オーテック鈴鹿 ウェルドクラフト製法」

CBR1000RR(SC57,59)や600RRのスリップオンマフラーや、ミニモト4耐用レース用マフラー等、数多くの共同開発を行ってきたオーテック鈴鹿に今回おじゃましました。  オーテック鈴鹿マフラー工場内試作室にて、同社最大の特徴ともなっている、ウェルドクラフト製法について、クラブへの問合せも多いため、取材しましたので、クラブ員の皆様に紹介します。


写真:試作の様子
写真はSC59フルエキ開発中の様子。等長化を実現するため、試作職人がレイアウトや形状など試行錯誤しているところ。試作後、シャシ台と実走を繰り返し、ベストな形状を決めていく。

開発中(09年6月時点)のSC59用の等長エキマニレーシングフルエキを開発の現場に立ち合わせていただいた。通常、エキゾーストマニホールドは、直管パイプをベンダーや型で必要な形状に曲げることがほとんどだ。理由は単純でコストと生産性。 ここに同社の技術が光る。

「生産性やコストを考えれば、曲げが当たり前の選択です。  では、モトGPやF1の写真をみてみると一目瞭然です。  ベンダー曲げしたのエキゾーストは少ないことに気づくでしょう。」

同氏は続けます。

「マフラーで感動や官能性能を追求するということは、オーテック鈴鹿として、性能に妥協することは許されません。 もちろん、コストを重要視するマフラーを製作することはあります。しかし、高性能であり品質感を最重要視する私達は、特にフルエキを作るにあたっては、ウェルドクラフト工法を採用し続けています。」

ウェルドクラフト製法と、ベンダー製法で、見た目の違いはわかりますが、具体的に何が性能差となって現れるのでしょうか?


写真:曲げ製法
曲げ製法の場合がこうだ。一見、スムーズに流れそうだが、管の断面積はR形状ではつぶれる。排気効率は管が一番つぶれた場所できまるといっても過言でないため、特に一番大きいRの部位で、つぶれが顕著となり、結果として排気効率を大きく落とす。


写真:ウェルドクラフト製法
ウェルド=溶接工法。R部位を細かく輪切りにしたパイプを1個1個丁寧に積み上げて溶接してつなげていく製法だ。写真のとおり。溶接に高い技術能力が必要であり、この工法を量産として展開しているマフラー製造メーカーは皆無だ。

テスト段階と量産仕様で性能差があるマフラーは多いと聞く。多くは製造コストの問題に起因している。大内田氏の性能に対する一切の妥協をゆるさないマフラー作りを執念で進めて行った結果、量産体制と溶接技術に目処が付いたという。試作段階と量産に一切の差をもたらさない完璧な性能を、この製法が施されたマフラーを購入することで、我々も手にすることができるのだ。

「新聞紙をまるめて曲げて見ましょう。曲げた部分の断面が必ず小さくなりますね。金属もある程度伸びはありますが、最近よくマフラー素材として良く使われるチタンは、強度がある分薄くできるため軽くなりますが、反面伸びが悪い。どうしてもベンダー方式でエキマニを作ると断面積がつぶれて排気効率に影響が大きくでてしまうのです。 そこで、モトGPやF1にも採用し続けているパイプ輪切り製法に注目。断面積がかならず一定でR形状が実現できる。ということは、最高の排気効率=性能を得ることができるのです。我々は、創業当時からこの製法に拘って作り続けています。」と同氏は熱く語る。

同社の看板商品となっている、ドッグフィッシュのマフラーを使ったライダーは、とにかくリピーターが多い。それは、官能的な音や裏打ちされた絶対性能が理由なのは当然であるが、拘りぬいた大内田氏の情熱に打たれてしまうからだろう。

取材 2009.6.8 COCJ事務局スタッフ